実店舗を持つビジネスにおいて売上や顧客満足度の向上を目指すには、店舗レイアウトを見直すことも重要な要素です。今回は店舗レイアウトについて、重要性や設計にこだわるメリット、レイアウト設計のポイントや業種別に見るコツなども解説します。店舗の売上アップを目指す人、レイアウトの見直しを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
店舗レイアウトと売上の関係性
店舗の出店や改装では、店舗レイアウトが非常に重要です。ここでは、店舗レイアウトの概要と売上に与える影響について詳しく解説します。店舗レイアウトの概要
店舗レイアウトとは、商品の陳列位置や顧客・従業員の動線、什器の位置、照明の位置などを総合的に計画・設計することを指します。ゾーニングにより区分けされた売り場ごとに商品や什器の位置を検討することで、業務効率や売上のアップを実現可能です。店舗レイアウトが売上に及ぼす影響
売上は客数と客単価をかけ合わせて求めるのが通常です。また、客数は来店頻度別や買上げ客数別に、客単価は買上げ単価別と買上げ点数別にも分けられます。顧客が商品を手に取るかどうか、数ある商品の中でどの商品に注目するかは店舗レイアウトに大きく左右されます。欲しい商品が探しやすく回遊性が高い店舗であれば、買上げ客数や買上げ点数を高水準で維持することが可能です。さらに、顧客が購入する商品の多くはもともと買う予定がなかった商品であるといわれており、店舗に出向く前から購入することを決めて買われる商品は2〜3割程度です。つまり、店舗レイアウトにこだわって購買意欲を刺激するような配置を重視することで、売上アップを実現できます。
店舗レイアウトに重要な考え方
店舗レイアウトを考える際には、売り場・動線の工夫を顧客目線に立って検討することが重要です。AIDMAの法則はアメリカのサミュエル・ローランド・ホールが提唱した考え方であり、顧客が商品を認知してから購入に至るまでの行動の仮説を指します。店舗レイアウトを考える際には、AIDMAの法則をもとにするとスムーズです。AIDMAの法則では、商品を知る段階のAction、商品に興味を持つ段階のInterest、商品をほしいと感じる段階のDesire、商品を記憶する段階のMemory、商品を購入する段階のActionの5つの段階に分けて行動プロセスを捉えており、それぞれの頭文字を取ってAIDMAとしています。
AIDMAの法則に沿って店舗レイアウトを決定することで、各段階にいる顧客に対してしっかりと商品をアピールできます。
店舗レイアウトを考えるメリット
店舗レイアウトを設計して整えるメリットはさまざまです。具体的なメリットは以下の通りです。顧客にとっての利便性が高まる
店舗レイアウトの設計にこだわることで商品を見やすくなり、結果として顧客満足度のアップにもつながります。ほしい商品を見つけやすくなるのはもちろん、自然な流れでスムーズに店舗内を移動できることから、ストレスなく買い物を楽しんでもらえるでしょう。また、飲食店などでは快適に過ごせるスペースの確保や席の間隔を検討することが重要になります。
店舗の奥にある商品もチェックしてもらえる
店舗レイアウトにより移動しやすい設計を意識することで、店舗の奥の方に陳列されている商品もチェックしてもらえます。とくに店舗の突き当りでは方向転換するために歩くペースを落とすため、商品に目が行きやすいです。まずは奥側までたどり着いてもらえるよう明るく開けた設計を採用し、歩くペースが落ちる突き当りには季節商品・セール品などを配置するのがおすすめです。
空気の循環効率がアップする
路面にあるお店は顧客や従業員の出入りによってドアが開閉されるため、とくに冬場には冷たい外気が入ることで不快感を覚える人もいるでしょう。店舗レイアウトにより空調の位置を検討すれば、空調・空気の循環効率がアップして、過ごしやすい温度をキープしやすくなります。外気の影響を受けにくいレイアウトを意識することで、お店に訪れた顧客が快適に過ごせるでしょう。
購買点数増加につながる
店舗レイアウトにより商品の陳列場所を工夫すれば、目に入る商品の量が多くなり、結果として購買点数増加にもつながります。顧客目線に立ってどの商品をどの場所に配置するかを検討し、各商品を陳列する位置や量を最適化しましょう。競合他社との差別化ができる
店舗レイアウトを工夫することでブランドの魅力を引き出したり強調したりできるため、競合他社との差別化にもつながります。ブランドの個性をレイアウトにも反映すれば、ブランディングのひとつとしても有効です。売上アップにつながる店舗レイアウトのポイント
店舗レイアウトを設計する際は、売上アップにつながるポイント・コツを押さえておくことが重要です。ここでは、店舗レイアウトの具体的なポイントについて詳しく解説します。滞在時間を延ばすことを意識する
店舗レイアウトにおいては、顧客動線を長くして、少しでも長く店舗内に滞在してもらうことが重要です。たとえば、入口からひと目で店内を見渡せる開放感あるレイアウトには魅力が数多くある一方で、入店前から陳列棚全体をチェックできることで入店までつながらなかったり、実際に商品を購入するところまで至らなかったりするケースも少なくありません。目玉商品を目につきやすいところに陳列するのも大切ですが、棚を増やして低い位置にも商品を陳列するなどの工夫を取り入れながら、店内をもっとチェックしたいという興味を引くことも重要です。
死角を作らない
店内に長く滞在していても、陳列棚が死角になると商品をチェックしてもらえません。実際に店内を歩きながら商品の見え方を確認して、死角ができないように配置を調整しましょう。売れやすい陳列位置を把握しておく
店内の陳列位置には、商品が目に止まりやすく売れる位置と、売れにくい位置とがあります。たとえば、店内に入ってすぐの陳列棚は目に留まりやすくインパクトが大きいため、新商品・季節商品の陳列に向いています。また、買い物の際に必ず通るレジの横には金額が小さく手に取りやすい商品を配置することで、精算前に気軽に購入商品を追加してもらいやすくなるでしょう。さらに、店舗の突き当りは方向転換で歩くペースが落ちるため、セール品などの陳列におすすめです。
商品陳列は床上から110〜140センチがもっとも目に入りやすいとされているため、レイアウトの際は棚の高さも意識しましょう。
顧客の立場に立って行動を考える
顧客の立場に立って行動を分析し、注目しやすい商品位置や店内での道順などを考えることもポイントのひとつです。行動分析の解像度を上げるためには、顧客の年齢や性別、家族構成などの背景まで想定し、各ターゲットごとに詳細な行動を考えるのがおすすめです。ターゲットを絞る際は、実際の来店客をチェックしたり、店舗の前を通る人の属性を把握したりするのがよいでしょう。
業種やブランドのイメージに合ったレイアウトを意識する
店舗レイアウトの設計する際は、業種に合った雰囲気に仕上がっているか、ブランドのコンセプトにマッチするかどうかも重要なポイントです。商品の陳列場所はもちろん、世界観を統一するためにフロア素材や壁紙、什器などにもこだわりましょう。出入り口を整える
お店の出入り口は、外から店舗を見たときに最初に目に入る場所です。出入り口のレイアウトにより入りやすい印象を与えたり、何を売っているのか・何が目玉商品であるのかなどが伝わるように工夫したりすることで、ストレスを感じずに入店できます。さらに、出入り口の広さを調節する・ガラスの壁やショーウインドウの設置有無を検討することで、開放感や店内の見え方についても考えておくことが重要です。
スタッフ動線を検討する
店舗レイアウトを考える際は顧客の行動や動線に目が行きがちですが、スタッフ動線についても頭に入れておくことで、業務効率アップを狙えます。事故やミスのリスクも小さくなるため、結果として高品質なサービス提供を実現できます。スタッフの業務の流れや実際の動きを確認し、現場スタッフの声も取り入れながら動線を確保しましょう。また、顧客動線とスタッフ動線が交差すると、お互いに心理的な圧迫感を感じたり、ストレスが溜まったりする原因となります。とくにスタッフの作業が発生しやすい場所については、顧客動線とぶつからないよう配慮しましょう。
業種別に見る店舗レイアウトのコツ
先述の通り、店舗レイアウトは業種や販売する商品・サービスに合わせて最適な設計が異なります。ここでは、業種別で考える店舗レイアウトのコツについて詳しく解説します。アパレル店
アパレル店では、店舗の外からファッションをチェックできるショーウインドウを活用するのが主流です。ショーウインドウには季節に合った売り出し中のアイテムを配置し、トレンド感あるファッションで顧客の興味を引きましょう。さらに、試着室やレジなどを店舗の奥側に配置することで、店内奥に陳列されている商品にも注目してもらえます。白を基調とした内装で清潔感を演出したり、ライトの位置を調整して商品を目立たせたりする工夫も有効です。
ブランドのコンセプトカラーなどが決まっている場合には、壁紙などに取り入れるのもおすすめです。
雑貨・小売店
雑貨・小売店では、商品を種類別に陳列することでほしいものを見つけやすくなります。天井に案内表示を設置するなどして、どこに何があるのかをすぐに把握できるよう工夫することも重要です。とく雑貨を取り扱うお店はひとつひとつの商品が小さく、棚の商品が整えられていないとごちゃついた印象を与えてしまいます。商品同士が重ならないように棚の数や配置を考えることで各商品が目立ちやすくなり、購買意欲を刺激できるでしょう。
また、店内はお店のコンセプトや販売する商品に合わせてデザインし、明るい色でポップな印象に仕上げたり、アンティーク什器で購入感を演出したりするのがよいでしょう。
飲食店
飲食店では入り口付近に看板メニュー・本日のランチメニューなどを提示することや、混雑時の待合スペースを確保することなどが重要です。また、スタッフが奥の客席まで目を配れるよう配慮したり、直線的な動線で合理的な動きができるよう工夫したりして、スタッフ動線を意識することも大切です。さらに、おしゃれなカフェであれば観葉植物を設置してナチュラルな雰囲気を演出する・高級バーであれば照明を落として落ち着いた印象を作り出すなどして、お店のコンセプトに合わせたレイアウトデザインを取り入れるのもポイントとなります。
大型店
百貨店や大型店では、ストアイメージを訴求するレイアウト設計が重要です。また、顧客やスタッフの安全を確保するため、避難動線についても意識しましょう。店舗レイアウトの変更方法
既存店舗のレイアウトを変更する際は、どのような方法で変更するかを検討しなければなりません。予算や希望に合わせて、最適な方法を選択しましょう。ここでは、店舗レイアウトの変更方法について詳しく解説します。DIY
DIYにより店舗レイアウトを変更することのメリットは、費用をおさえられることです。自分たちの手で作業しなければならないため手間や時間はかかりますが、什器の配置変更や壁紙の張替えなどのかんたんな作業であればスムーズに進められるでしょう。デメリットとしては、難易度の高い改修には対応できないこと、ミスやトラブルが起こるリスクが高まることなどが挙げられます。
リフォーム
建築会社にリフォームを依頼する方法です。大規模な改修にも幅広く対応できるほか、プロの作業によりクオリティが担保されることなどがメリットとして挙げられます。コストが高額になるというデメリットもあるものの、レイアウトの見直しによって売上や顧客満足度が上げれば結果としてプラスになるでしょう。また、リフォームによって物件そのものの価値が上がれば、移転や退店の際に高く売れる可能性もあります。
テナント移転
店舗レイアウトを根本的な部分から見直したい場合には、ニーズに合ったテナントに移ることもひとつの手です。立地や土地の広さ、駐車場の有無、周辺商圏のターゲット層とのマッチ度なども考慮して、理想のレイアウトを実現できるテナントを選択しましょう。テナントの移転には時間もコストもかかりますが、レイアウト設計にこだわることでビジネスの大幅な成長が期待できます。
